人間教育

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人間教育 三十一







教育部の人間教育運動の、推進力となって




きたのは、青年教育者たちであった。




教育の世界では、経験年数がものをいい、




若い教師が、ベテランの教師と自由に意見




を交換したり、一つの物事の責任を全面的




に任されることは少なかった。だからこそ、




学会の教育部では、青年教育者を前面に




出し、情熱に満ちあふれた若い力と、柔軟




な英知を大切にしようと務めてきた。




それは、山本伸一の意思であり、信念であ




った。青年が伸び伸びと力を発揮してこそ、




新しい前進があるからだ。ゆえに、彼は、




教育部の中心者にも、青年を登用していた。




青年教育者は、教師としての経験に乏しい




だけに、未熟な面もあろう。しかし、伸一は、




彼らのもつ高い志、未来性、向上心、一途な




情熱に、満腔(まんこう)の期待を寄せていた




のだ。











牧口常三郎と親交があり、国際連盟事務局次




長も務めた教育者・新渡戸稲造は、青年時代




の思想について、こう評価している。




「世の中の慾即(よくすなわ)ち名誉も富貴も知




らない清浄無垢(せいじょうむく)の青年時代に




起こる思想が最も貴(とうと)い」(注1)




また、牧口は、自分の考える教育改造の担い




手は、青年であると断言している。




「斯(か)やうなる大生活改革は、所詮(しょせん)、




純真にして真理を需(もと)め、正義の為、国家




のためには、敢然として闘(たたか)ふだけの




気概(きがい)ある青年教育家にあらざれば、




てんで、相手にされぬものであろう」(注2)




一九七五年(昭和五十年)の年頭、青年教育者




たちから、声が起こった。




「今年は、『教育・家庭の年』だ。今こそ、青年




教育者が立ち上がり、本格的な人間教育運動




の大波を、日本中に起こしていく年ではない




か!」




そして、三月、静岡での教育部春季講習会の




折、全国の代表二千人が集い、満を持して、




初の青年教育者大会が開催されたのである。




伸一は、嬉しかった。はつらつと使命に燃えて、




新しき時代を築こうと奮闘する青年の姿ほど、




尊貴(そんき)なものはないからだ。







   

(注1)「自警」(『新渡戸稲造全集7』所収)

    教文館

(注2)「教育改造と宗教革命」(『牧口常三郎

    全集9』所収)第三文明社










    =2011年3月23日・聖教新聞
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