読書 文読む月日

文読む月日 (中) (ちくま書房)

文読む月日 (中) (ちくま書房)

トルストイさん、北御門さん、本当に素晴らしい本をありがとう。


「われわれの生活のあらゆる外面的変化は、われわれの思想に生ずる変化に比べえば、取るにも足りない。」70項




「われわれは訓練と教化の時代に生きているけれども、徳化の時代に生きるようになるのは、まだなかなかのことである。人間の現在の状態では、国家の繁栄につれて人間の悲惨が増してゆくといっても差しつかえない。それで、今日のような教化がいっさい存在しなった未開状態のほうが、われわれの現在の状態よりも幸福だったのではあるまいか、との疑問が残る。
 なぜかといって、人間を道徳的にし、賢明にしないでいて、どうして人間を幸福にすることができよう!(カント『教育学』より)」85項


「われわれは三つの方法で叡智を獲得することができる。思索による方法――これは最良の方法であり、模倣による方法――これは最も容易な方法であり、体験による方法――これは最も苦しい方法である。(孔子)」121項
体験による学習はたしかに苦しいけれど(反面楽しい)、学ぶことは多いと思う。考えさせられる言葉。いろいろな体験があるから、体験とはひとくくりに語れない話題だとは思う。思索も体験であるし、敬虔だ。



「不合理な生活から来る苦悩は、われわれに、合理的生活の必要性を意識させるに至る。」120項


「苦しみが君を襲ったときはいつも、どうしてその苦しみから逃れようかと考えるよりも、君が道徳的により完全なものになるためにその苦しみが何を、どのような努力を君の要求しているか、を考えるがよい。」121項


「愛は人間に彼の生の目標を示し、理性は愛を実践に移す方法を示す」153項


「人間は、自分を取り囲む森羅万象と比べると、まるでか弱い葦のようなものである。しかしながら、彼は考える葦なのだ。
 ほんのちょっとしたものでも人間を殺すことができる。しかし、それでも人間は、あらゆる生き物、あらゆる地上的存在よりも高貴である。なぜなら人間は、死ぬときも、自分が死ぬことをちゃんと知っているからである。人間は、自分の肉体が自然の前でいかに小さいものかを知っている。だけど自然のほうは何一つ知らない。
 われわれ人間の優秀性は、その思考力にある。思考力のみがわれわれ爾余一切の世界の上に高める。われわれの思考力を大事に守ってゆこう。それこそわれわれの生活をくまなく照らし、何が善で何が悪かをわれわれ示してくれるのだ。(パスカル)」153項

「もし君が、何もかもが暗く見え、誰もかれもが悪く見え、誰もかもに意地悪を言ったり、進んで意地悪をしたくなったりしたら、自分を信用しないようにするがよい。そんなときは、自分を酔っぱらいを見るような目で眺め、何もしないでそうした気分が去るのを待つがよい。そんな状態のときはなるべく何もしないでいるほうが、早く平常に戻る。それはちょうど、酔っぱらいも一晩ぐっすり眠れば、素面に戻るようなものである。」162項


「もし世界が汚らしく見え、人々が悪質で不愉快で、その行為が愚劣で醜悪に見えるなら、むしろそうした状態を利用して、急いで自分自身に注意を向けるようにするがよい。そうすれば君は、以前に見えなった汚点を自分のなかに発見し、そのように自己の醜悪さを認めることによって自らを益するであろう。」163項


「果てしのない不幸などというものは、めったにありはしない。絶望は希望以上に人を欺くものである。(ヴォーヴナルグ)」163項


「けっして意気消沈してはいけない。」163項


「人間は幸福でなければいけない。もし不幸であれば、その人自身がいけないのである。」163項