平和に向かって
バーゼル放送局の終戦記念祭のために


憎悪の夢と血の陶酔から目覚めて
戦争の閃光のために目はまた見えず
戦争の死の騒音のために耳はまだ聞こえず
そのような恐怖も学び知り
兵士は疲れ果てて
武器を手から離し
恐るべき仕事から解放される


「平和だ」――そう叫ぶ声がする
まるでおとぎ話のように、子どもの夢のように
「平和だ」――しかし心は素直に喜べない
涙の方がまだずっと近くにあるのだから


我々はあわれな人間
善にも悪にも能力を持ち、獣(けだもの)であり神である
今日、我々は何と痛みをいだき、恥に駆られて
大地に打ちのめされることだろう


しかし我々は希望を持つ
胸には愛の奇蹟への燃える予感が生きている
兄弟よ、精神が我々の帰還を待っている
愛が我々の帰還を待っている
そしてすべての失われた人々には
楽園の扉が開いている


意欲を持て、希望を持て、愛を持て、
そして大地はふたたび君たちのものだ


1944年〜1962年ヘッセの詩