困難なときにある友へ


愛する友よ、この暗いときにも

僕の言うことに耳を傾けたまえ

人生が明るいときも暗いときも

僕は人生を決して罵りはしない


輝かしい太陽も、吹き荒れる嵐も

ともに同じ天の見せる表情なのだ

甘いものであれ、苦いものであれ

運命は良き食物として僕を鍛える


魂は曲がりくねった道を歩みゆく

だから魂の言葉を読むことを学べ

それは今日苦しみであったものを

明日はもう恩寵として讃えるのだ


死にゆくのはただ未熟な者ばかり

そうでない者は神から学ぶだろう

低いものからも、高いものからも

真心あふれる感性をはぐくむ術を


あの最後の段階に達して初めて

僕らに休息することが許される

それは父が僕らを呼んでいる所

僕らが天を仰ぐことのできる所


ヘルマン・ヘッセ全集16』日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会編



嵐の後の花


兄弟のように、みな同じ方向にうなだれ

風に吹かれて滴をしたたらせながら

なお不安におじけづき、雨粒に目はくもり

幾つかの弱いもの折れて倒れ伏している


ゆっくりと、なお麻痺してためらいながら

花たちはなつかしい光の方へと再び頭をもたげ

兄弟のように、ようやく微笑を交わしあう

私たちは無事だ、敵に倒されはしなかったと


その眺めに、私はあの多くの時を思い出す

麻痺し、暗い生の衝動に駆り立てられながら

みじめな夜から再び身を起こして、感謝しつつ

愛するなつかしい光へと向き直ったことを


ヘルマン・ヘッセの一九三三年の夏の詩より 『ヘルマン・ヘッセ全集16』日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会編