- 作者: 北大路翼
- 出版社/メーカー: 邑書林
- 発売日: 2015/05/01
- メディア: 単行本
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爪切ればどこまでも飛ぶ春の海
春光を輝き返すバッジかな
一日中マスクの中の空気吸う
飛ぶよりも止まつてゐたるときが蝶
ギリギリの傘のかたちや折れに折れ
全力で寝そべつてゐる夏の雲
綿菓子のやうなおかんを連れ歩く
煙から空気に還る月の下
終電の後に月まで行く電車
長き夜のギターの腹に丸き闇
秋風をばくばくするのはやめなさい
オカリナに口つけるとき涼しくて
虫の音も鼓動も生きろといふ祈り
雪合戦負けず嫌ひの眼が真っ赤
臆病な心に届くスープかな
炒飯のはらはら花の降るごとし
ぽろぽろとウインナー足すポトフかな
どら焼きをくはへたままで障子貼る
除雪車はがんがん進む歯を磨く