読書 習熟度別指導の何が問題か

習熟度別指導の何が問題か (岩波ブックレット)

習熟度別指導の何が問題か (岩波ブックレット)


「ここで『習熟度別(能力)別指導』に関する結論を総括しておきましょう。『習熟度(能力)別指導」は①小学校では『上位』『中位』『下位』のどのグループでも有効性はなく、②中学校では『上位』グループにおいて適切な教育が行われた場合に限って有効性を主張する調査研究も存在しますが、③いずれの場合も学力格差は拡大し、④学校全体の学力向上につながらず、⑤階級や階段的組織と学習集団の均質化により学びの経験を狭め、競争と失望を促進して歪んだ優越感と劣等感を助長します。さらに『習熟度(能力)別指導』は、教師の仕事を『責任』から『サービス』へと転換させ、教師の子どもの見方や能力の見方や教育の考え方におけるモラルの低下をまねき、学校教育における平等と民主主義を破壊し『学校の塾化』を促進します。」58項

あと習熟度別学習の補償教育での有効性を実証する研究があるらしい。


能力別の学習をはっきり進めると、歪んだ優越感と劣等感が出てくることはあると思います。能力的に下のクラス(進学塾)の人をバカにしている児童を見たことがあります。どうすればEQが高まるのかと思いました。


公立学校は平等に基本的な力を身につけさせてあげられるようにサポートするべきだと思いますが、いろいろな観点で学力格差がある(また拡大していく)のは自然なことだと私は思います。問題は子どもたちが学力(知識や体力など)を人のためにどう活かしていくかだと思います。知育の中でも知恵や心の教育(最近の言葉で言うとEQ教育)の問題だと思います。


水泳の授業は、一斉指導をするなら能力別の方が確実に効果があると思いました。でも『学び合い』の実践者の経験談を伺うと、また話が違ってくる。佐藤さんは一斉授業から協同学習へとたしか主張されていたと思います。この流れはいいことだと自分も思います。たぶん協同学習がメインのほうが、小学校のクラス全体の学力のパフォーマンスが断然いいというのが今の実感です(少ない現場経験ですが)。ただエリート(上位の人)教育だけのことを考えると習熟度別学習のほうが効果的なのかもしれないです。でもそれは公立学校のすることじゃないと思います。


どんな教員の考え方とか授業の方法で習熟度別学習について実証研究するかで話が違ってくると思う。小学校、中学校、高校、大学、専門学校という学校の種類でも話が違ってくると思う。エリート教育と補償教育で有効性が実証されている研究が複数あるなら一概に習熟度別学習はよくないとは言えないです。結局どの場面でどの方法を使うかの問題だと思う。どの場面で使うのが適切か。それが目的に有効ならそうすればいいだけの話だと思う。


学校の実態に応じて、習熟度別を部分的に導入するならいいのかなと思う。例えば補習など。ただそれを算数は少人数習熟度別でなどトップダウンに決められるのはよくないと思う。その方法よりももっと適切な方法がある場合があると思う。


それに上位とか中位とか下位って大ざっぱ過ぎる。上位や下位や中位と言っても、一人ひとり課題やニーズがバラバラです。それに応えることが大切だと思います。何を基準にしているのか分からないけど「上位」「中位」「下位」などの概念の抽象化から漏れてしまう現実が決定的に大事だと思います。





PBLとかイエナプランはいいと思う。想像するだけで快いです。