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Ayaka Löschke
必読!ドイツの大手新聞フランクフルト・アルゲマイネが2013年12月1日に石破茂自民党幹事長の発言を受けて掲載した記事を全訳しました。

石破氏による訂正も、同紙からしてみれば、「騒々しくとも、平和的に政府に抗議している人々の行動を依然としてテロリズムとほぼ同等に扱っている」点で、十分問題だということです。また、福島瑞穂社民党代表代行による抗議、特定秘密保護法案の担当大臣ある森まさこ・担当相が、「福島第一原発放射能に汚染された食料品に関する情報が遮断されてしまうのではないか」という人々の懸念を全く払拭できていないことも触れられています。

写真は記事に添えられていたAFP通信によるものを転載。原文はこちら:
http://www.faz.net/aktuell/politik/ausland/asien/japanische-sicherheitspolitik-schutz-vor-buergerrechtlern-und-anderen-terroristen-12689697.html

《日本の安全保障政策:人権活動家と他のテロリストに対する防御(Schutz vor Bürgerrechtlern und anderen Terroristen)》

日本は機密漏洩者に対する大砲の発射準備を整えている。尖閣諸島をめぐる中国との争いがまさにタイミングよく、日本の安倍首相に見舞っている。(Carsten Germisによる東京からの報告)

地方紙の「高知新聞」の編集長が不吉な言葉でもって警告している。「戦争の序章は、私たちが兵隊の長靴の音を聞くずっと前に始まる」。意図しているのは、先日、日本政府と中国政府のもとで波乱を巻き起こした、尖閣諸島や新しい防空エリアを巡る中国との争いのことではない。日本の首相・安倍晋三が今週、参議院強行採決(peitschen)するつもりの、国の特定機密を保護するための法律が問題なのだ。

最近の中国政府との争いは、安倍晋三のもとに、非常に都合よく起きている。それはまさに、安倍が、彼の国粋主義的な行動計画(nationalistische Agenda)を貫徹するのを助けるような争いだ。「高知新聞」の社説においてはさらに、「言論の自由を厳しい刑罰でもって抑圧するような、閉ざされた社会がいかなる道を選ぶのか、ということを、歴史は私たちに教えてくれる。それは、監視国家、あるいは警察国家への道である」。

[人権活動家は「テロリスト」であるという(Bürgerrechtler sollen "Terroristen" sein)]

多くの批判者たちは、特定秘密保護法案のうちに、日本を侵略戦争へと駆り立てた1930年代のナショナリズムの時代への逆戻りを見ている。当時もまた、政府が、意見を異にする人々への対抗措置をとるための法律(注:治安維持法)を公布。最後には、導入されて間もなかった民主主義の撤廃も行われた。日本のメディアも、安倍の今週末の強行採決の計画に対する批判でほとんど一致している。

政権トップである安倍は予告した、今週の参議院での協議の間、彼がそうした諸々の不安を払拭すると。ただし、安倍はあらかじめ、法案の修正を選択肢から除外している。民主主義の切り崩し(Aushöhlung)への諸々の不安は、おまけに、政権を担う自民党の幹事長、石破茂による発言によって増大した。石破茂は週末、報道の自由や情報開示の制限を警告する人権活動家たちのデモを「テロ活動」とほぼ一緒くたにしたのだ。

[石破は火に油を注いだ(Ishiba legt nach)]

政権トップの安倍の側近の一人である石破は、ブログに、「絶叫戦術は、本質的に、テロ行為とほとんど変わらない」と書いたのだ。野党は、この発言によって、安倍政権が民主主義における基本的な自由を削減する意向であることが裏付けられたと見ている。「私は、そのような見解を述べるメンバーがいる政権など信用できない」と福島瑞穂社民党代表代行は語った。

石破はそれゆえ、波を鎮めようと試みた。石破は日曜の夜、彼の発言の一部を撤回する、と語った。デモではなく、デモから発せられる「騒音(Krach)」が問題だというのだ。よって、「静かなデモは、テロと説明されるに必須の条件を満たしていないので」、問題ないということだ。この自民党の政治家は、それでもって、彼の表向きの訂正において、騒々しいが平和的な、政府の計画に反対する人権活動家らの抗議行動を再び、テロリズムとほぼ一緒くたにしたのだ。

[機密漏洩に対する厳しい拘留刑]

将来、国家の危機(Misstände)に関わる秘密、あるいは情報を外部に漏らす者は、新しい法律によると、最長10年間の拘留でもって罰せられる可能性がある。この種の情報を公開する者、つまり、ジャーナリストも、最長5年間の拘留刑を計算に入れておかねばならない。安倍は全力で、この法律が国会期末である金曜日までに、日本の国会の二番目の議院である、参議院に持ち込むことを迫っている。衆院では、首相は彼の目論見を、短い討論の後、政権与党と保守的、国粋主義的な野党で構成された安定多数でもって、強引に通過させた(durchpeitschen)。政権与党における自由を尊重する声は、やんわりとした圧力でもって沈黙にもたらされた、と東京では言われている。

安倍は、この法案の可決が急を要することを、日本が今こそ、アメリカのように国家安全保障会議を導入して、国家機密を守らねばならない、として根拠づけている。この法律は、安倍の新しい外交、安全保障政策の戦略の欠かすことのできない構成要素である。その戦略は、中国の軍備拡大を背景として、アメリカとの緊密な軍事的提携に重点を置いている。

福島第一原発の事故に関して、もはやいかなる報告も許されない?(Keine Berichte über Pannen in Fukushima mehr?)]

法律の批判者たちは、何が国家機密に当たるのか、明らかにされていないことを指摘している。単に、それの外部への漏洩が罰せられる「特定秘密」としか言われていないのだ。何が「特定秘密」なのか、国は自在に定めることができ兼ねない、と批判者たちは主張している。国会によるチェックも、法案ではただ曖昧にしか確定されていない。常設のチェック機関の設立はまだ計画されていない。法案は、日本では欧州諸国よりも強い傾向にある、行政権(注:官僚、公務員など)に、何が国家機密として定義されるのかを巡る決定権を与えている。

法案担当の森まさこ大臣は、彼女が先週、委員会でのヒアリングの際、「国に仕える者とジャーナリストとの間の接触を規則によって制限することが重要である」と語ったとき、批判者の諸々の懸念をさらに増大させた。彼女は引き続き、参議院でのヒアリングの間で、「政府がこの法律によって、原発事故に関する不都合な情報、例えば、大惨事を起こした福島第一原発に関する情報、汚染された食料品に関する情報を隠蔽するのではないか」という懸念を払拭しようと再び試みたが、特に変化はなかった。

[80%の日本人がこの法律の乱用を予測]

しかし、この法律によれば、政府はやはり、原発に関するどの情報が隠されるのか、情報が場合によってはテロリストにとって重要であるがゆえに、自らの裁量で確定できる。自民党幹事長である石破がデモ参加者とテロリストをほぼ一緒くたにしたことを鑑みると、安倍政権が将来、国家の安全保障を理由に、(注:テロリスト=デモ参加者たちに)福島第一の事故を隠蔽したいのではないか、という嫌疑は理解できる。

日本の政治においては、国家の危機(Misstände)の隠蔽の例に事欠かないこともあり、世論は懐疑的である。アンケートによると、80%の日本人が、この法律が政権によって、スキャンダル、腐敗、その他の問題を隠蔽するため、乱用されると予測している。
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