用語の説明

牧口常三郎全集には斎藤正二先生が編集委員として関わっていました。
この全集の他の本にあまりないよいところは注や用語の説明がとても充実していることです。難しいですが、用語の説明があるので、それを助けになんとか読み進められるようにできています。


用語の説明をしっかり自分もやりたいです。


認知科学の論文には、用語の説明がないことが多いようです。専門家以外にはよく伝わらないと思います。知っていることが前提で書かれている。専門家向けの論文。



以下のように少しずつ認知科学で使われる用語を整理しているところです。

【ターゲットドメイン(target domain)】
 知りたいこと、あるいはまだ知らないことは、ターゲットドメイン、あるいは単にターゲットと呼びます。

【ベースドメイン(base domain)】
 すでによく知っていることはベースドメイン、あるいは単にベースと呼びます。

写像(mapping)】
 写像とは、検索されたベースの中のどの要素が現在の問題(ターゲット)のどの要素と関係しているか決定するプロセスです。ベースドメインの要素をターゲットドメイン写像(mapping)するという言い方をします。

 認知科学では、一般的に世界や知識を記述する時に、対象(物)(object)、属性(attribute)、関係(relation)を区別します。

【対象】
 対象とは世の中、あるいは知識の中に存在する事物に該当する。たとえば、猫、いちご、イギリス、社会などは対象です。対象はいわゆる物であってもよいし、抽象的な観念であってもよいです。

【属性・値】
 属性とは対象の性質であり、典型的には形、色、重さ、大きさなどのことです。この属性は種や個体ごとに特定の値(value)を持っています。たとえば、いちごは色という属性について、赤という値を持っているという言い方をします。

【関係・項・引数】
 関係とは、対象同士を結びつける役割を持っています。たとえば、「猫がいちごを踏んだ」という文においては、猫という対象といちごという対象が「踏む」という関係によって結ばれていると考えます。この時、関係によって結びつけられる対象を関係の項あるいは引数(argument)といいます。

【次数】
 物事の複雑さなどの段階を、ある観点から表すように定めたもの。普通は自然数で表します。


【構造】
 ゲントナーが提案した構造写像理論は、写像の過程で生じる膨大な無意味な仮説を排除するために、構造をという概念を持ち出しました。
 構造とは関係のシステムのことです。つまり構造は、対象と対象の関係のまとまりや全体、体系を意味します。ゲントナーの類推の定義にも”system of relation(関係のシステム)”とあります。

 類推のプロセスは、ターゲット表象の生成、ベースの検索、写像、正当化/適合、学習のサブプロセスからなるとされています。
 ターゲット表象の生成とは、ターゲット問題を理解するプロセスです。
 正当化は、写像のあとに後にくるプロセスです。写像の結果が妥当なものであるかどうか判断するプロセスです。
 類推を行った結果、何らかの新たな認識が生まれ、それが長期記憶に知識として保存される。これが学習のサブプロセスです。
 
 
構造写像理論を理解するために、関係についてもう少し詳しくみていく必要があります。関係には様々な種類が考えられますが、次のような区別が重要です。それは関係がとる項の数(arity)です。たとえば、「買う」という関係は少なくとも、「誰が」と「何を」という2つの項をとると考えられます。一方、「話す」「与える」などは「誰が」、「何を」、「誰に」など少なくとも3つの項をとります。一般に関係は対象(object)を引数とします。こうした関係は一次(first-order)の関係と呼ばれます。一方、ある種の関係は他の関係の項としている場合があります。こうした関係は高次(high-order)の関係と呼ばれ、「引き起こす(cause)」や「意味する(imply)」などはその例です。
 たとえば「次郎が悪口を言ったので、花子が部屋を出て行った。」という記述を考えてみます。まず「次郎が悪口を言う」ということは、「言う」という一次の関係で表現される原因です。「花子が部屋を出て行く」ということは「出て行く」という一次の関係で表される結果です。そしてこれらの原因と結果は、「引き起こす」という高次の関係によって結びつけられて、全体として「次郎が悪口を言ったので、花子が部屋を出て行った。」ということを表しています。