アラゴン①

アラゴン (新日本新書)

アラゴン (新日本新書)


アラゴン「未来の歌」より 大島博光訳


人間だけが 夢をもつものなのだから
自分の抱いた夢が ほかの人たちの手で
自分の歌った歌が ほかの人たちの唇で
自分の歩いた道が ほかの人たちの道で
自分の愛さえが ほかの人たちの腕で成就され
自分の蒔いた種子(たね)を ほかの人たちが
摘みとるために ひとは死をも辞さない
人間だけが 明日の日のために生きるのだ


わが身を忘れて尽くすことこそ 人間の道だ
人間とは みずからすすんですすめる者だ
ほかのひとに 自分の酒を飲むようにと
人間とは つねにその身を差し出す魂だ
おのれじしんに みずから打ち勝った者が
わが身の血を 人にあたえるのだ
その苦しみの報いなど 何ひとつ求めずに
そして来た時のように 裸で出てゆくのだ