別の星の不思議な報せ

ヘッセの「別の星の不思議な報せ」を読みました。
これはヘッセが戦争の前にみた夢をもとに書いた小説です。以下抜粋。

「しかし、彼はやはりひとつの質問を抑えることができなかった。ここに住むこれらの哀れな人々が取り残された者たちであり、遅れてやってきた子どもたちで、平和のない時代遅れの星の息子たちであるとしても、これらの人々の人生がこうしてびくびくと痙攣するように過ぎ、捨て鉢な殺戮に終るのだとしても、彼らが死者たちを戦場に置き去りにし、いや、ひょっとすると食いつくしてしまうかもしれないとしても、――そういうことも昔のあの恐ろしいお伽話に出てきたからだが――それでもやはり彼らの中には、未来への予感、神々についての夢、魂の芽生えのようなものが存在しているに違いなかった。そうでなければ、この美しくない世界全体はただの誤りにすぎず、意味がなかった。」86項、87項『ヘルマン・ヘッセ全集9』日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会編