『希望の大空へ』第6回 読書は楽しい!  池田大作

小学生向けと中高生向けの新聞が創価学会の機関紙にはあり、
池田先生が新たに子どもたちに文をつづっていて、
読書について語られるのを楽しみにしていました。
たぶんほとんどの人がこの新聞をとっていないのと、
その小学生向けのが届いたので全文書き抜きます。 


池田先生の文章はおいしい食べ物みたいだと思う。作文が言葉を選択する芸術だとすると、すごいなあと思います。前は小中学生向けと高校向けに書かれていたから、小学生向けっていうのははじめてかもしれないです。


打ち終えて思ったのは、ペスタロッチについて少年少女に向けて20才の頃に書かれた原稿といい意味で変わっていないです。詩的な名文です。新聞はすべての漢字にルビがふってあります。


=============================================
 秋は、大空がすみわたり、大地は豊かな実りをむかえます。私たちの命を支えてくえるお米をはじめ、真心をこめてそだてられた農作物もしゅうかくされます。
 この大自然のリズムに合わせて、秋は、人間の心も体も大いに充実する季節です。
 ですから、よく「スポーツの秋」とか、「芸術の秋」とか、いわれます。
 食事もおいしいので、「食欲の秋」という人もいるでしょう。
 きょう、私がすすめたいのは、「読書」という「心のごちそう」です。
 「読書は、ちょっと、苦手だなあ」と思っている人もいるかもしれません。
 でも、大丈夫。好きな本が1冊でも見つかれば、すぐに楽しくなります。読書は、昔から、人類が大切にしてきた人生の大きな喜びなのです。
 毎年10月27日から2週間が「読書週間」となっています。
 みんなも思うぞんぶんに、本を読んで、楽しい「読書の秋」にしませんか。


 読書は、心おどる冒険のはじまりです。
 ドイツにヘルマン・ヘッセという作家がいました。子どもの時に、一つのきっかけから読書の楽しさに目ざめました。
 ヘッセ少年の家には、おじさんが集めた古くてほこりをかぶった本が、本棚にぎっしりと並んでいました。むずかしそうな本ばかりだなと思いましたが、その中に2冊だけ、気になる本がありました。
 1冊は、『千夜一夜物語』。「アリババと40人の盗賊」など、アラビアに伝わる昔話を集めた本です。
 そしてもう1冊は、『ロビンソン・クルーソー』です。無人島にたどり着いたロビンソン・クルーソーが、さまざまな試練を乗り越えていく冒険小説です。
 この2冊の本を開いてみると、それはそれはおもしろくて、ヘッセ少年はすばらしい宝物を発見したと大喜びしました。ここから”本棚の探検”に飛びこんだのです。それが、後に世界的な作品を生み出していく出発になりました。
 みなさんも、この探検をやってみましょう。近づくと、本は「読んでみて」と語りかけてきます。この小さな声の耳をかたむけ、手にとって開いてみてください。きっと新しい発見があるはずです。
 私は、小さいころから体が弱かったので、家で休むこともありました。でも、心の中は広々としていました。そばに本という友だちがいてくれたからです。
 本さえあれば、どこにいても、いつの時代の、どの国へも自由に旅をすることができます。歴史上の偉人や、物語に出てくる大英雄たちとも話すことばできます。そのひとたちになりきって、何十回も、何百回も、偉大な人生を生きることもできるのです。読書をしている時ほど、きらきらした楽しい時間はありませんでした。
 この喜びを、大切な大切なみなさん方に、つかんでほしいのです。


 読書は、むずかしく考える必要はありません。読んでみて、あまり興味がわかなかったら、途中でやめても、いいんです。もっと読みやすい本を選べばいい。
 未来部の担当者の方が、良い本をすすめてくれることもあるでしょう。
 あとで読もうと思って、そのまま積んでおいてもかまいません。これを「積ん読」という人もいます。いつかまた読むようになったり、ほかの本を読んでいるうちに、その本の内容がわかったりします。
 自分は読むのが遅いと思っている人も、たくさん読んでいくうちに、少しずつ慣れてくるものです。友だちが読んでいる本が気なったら、自分でも読んでみて、感想を話し合ってもいい。
 学校の図書室や近くの図書館なども、じょうずに活用しましょう。たとえば、その棚にある世界文学全集を、かたっぱしから読んでみるのも、大きな財産になります。
 ドイツの文豪ゲーテは毎日、名作を読むなど、良い習慣を身につけることをすすめていました。そうすれば、「その習慣によってたのしい日には自分の喜びをさらに深め、悲しい日には立ちなおることができる」というのです。
 みなさんの年代に、「読書をするクセ」「いつも本を手にする習慣」がつけば、それが一生涯、たくましく、賢く、朗らかに生きぬいていく、かけがえのない力となります。
 ところで、みなさんはは、多くの生きものたちにとって、「秋」は、どういう季節だと思いますか。 
 それは、やがて来る、きびしい冬に負けないように、力をつける季節なのです。
 秋に食欲が増して、十分に栄養をたくわえようとすることも、冬を乗り切っていくための準備もいえます。
 みなさんの心にとって、「読書の秋」は、同じ意味をもっています。つまり、どんな試練の冬がおそいかかってきても、勇敢に立ち向かい、勝ち越えていく勇気と英知を、読書を通して、みがき、きたえていくチャンスなのです。
 私が尊敬する信念の大科学者に、ロートブラット博士という方がおります。この地上から核兵器をなくすために、96歳で亡くなるまで、戦いぬいた平和の闘士です。
 幼き日、博士は、第一次世界大戦のせいで、一日にパンが二切れだけという、どん底の生活を送らざるを得ませんでした。
 その博士の命の支えとなったのも、読書でした。博士は、月旅行や海底旅行を予言したフランスの作家ジュール・ヴェルヌの空想科学小説などを読みながら、「科学の力で、人類のため、世界のために貢献できるにちがいない」と夢を広げ、学びに学びぬいていったのです。
 そして、この地球上に核兵器のない「平和の春」をもたらす夢は、未来を生きる創価の少年少女のみんなに受け継いでもらおうと、博士と私は語り合いました。
 青春時代、私にとって、読書は自分を鍛える戦いでありました。
 人生の師匠である戸田城聖先生から、私は毎日のように、「今、何を読んでいるか」と聞かれたのです。さらに「どんな内容か言ってみなさい」と鋭い質問が続きます。どんなにいそがしくても、真剣勝負で良書に、一冊また一冊と挑みました。
 この先生の教えのおかげで、世界のどんなリーダーとも、どんなテーマでも、思いのまま語りあえる力をつけることができたのです。
 創価学会は、まさに「学ぶ会」です。
 読書を通じて、良き友と学び合い、友情を結び、力をつけて発展してきました。
 みなさんも、読書に挑戦してください。
 自分の夢をえがき、実現するために!
お父さん、お母さんに親孝行するために!
 そして、この世界から不幸と悲惨をなくすために!
 読書は、夢に続く階段です。
 読書は、友情のかけ橋です。
 読書は、永遠に光り輝く宝物です。
 みなさんの、きょうの読書が、自分のためになり、人のためになり、社会のためになり、世界を変えていくのです。
 いつか、みなさんにお会いした時に、私は聞いてみたいと思っています。
 「今、何を読んでいますか」と。

==========================================