困難なときにある友へ

困難なときにある友へ


愛する友よ、この暗いときにも

僕の言うことに耳を傾けたまえ

人生が明るいときも暗いときも

僕は人生を決して罵りはしない


輝かしい太陽も、吹き荒れる嵐も

ともに同じ天の見せる表情なのだ

甘いものであれ、苦いものであれ

運命は良き食物として僕を鍛える


魂は曲がりくねった道を歩みゆく

だから魂の言葉を読むことを学べ

それは今日苦しみであったものを

明日はもう恩寵として讃えるのだ


死にゆくのはただ未熟な者ばかり

そうでない者は神から学ぶだろう

低いものからも、高いものからも

真心あふれる感性をはぐくむ術を


あの最後の段階に達して初めて

僕らに休息することが許される

それは父が僕らを呼んでいる所

僕らが天を仰ぐことのできる所


ヘルマン・ヘッセ全集16』日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会編