読書 トルストイ

イワンの馬鹿 (トルストイの散歩道)

イワンの馬鹿 (トルストイの散歩道)

二老人 (トルストイの散歩道)

二老人 (トルストイの散歩道)

再読。とてもよかったです。めちゃくちゃおもしろいわけじゃないけど、そこそこおもしろく大切な学びがあるはずの良書だと思います。


「二老人」と「三つの疑問」は言いたいことが一緒だと思います。どの話も心にずっしり残る。大事なことを忘れがちなので、たまに再読したいです。
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「三つの疑問」という物語がある。(中村白葉訳『トルストイ全集』13所収、河出書房新社
 ある時、皇帝が仕事をしていくうえで、三つの疑問にぶつかった。
 それは第一に、仕事にとりかかるにあたって、いちばん適切な「時」とはいつか、という疑問である。どういう「時」をはずさなければ、悔いを残さないですむのか――。
 第二に、自分にとってどういう人が、いちばん必要な人物なのか、どういう人を大切にしていけばよいのか、という疑問である。
 そして第三に、すべての事業のなかで、どういう仕事が、いちばん大切なのか、という疑問である。皇帝は、この三点を知りたいと強く願った。これがわかれば、成功の人生を歩めると、考えたからである。
 皇帝は、正しい答えを教えてくれた人には莫大なほうびを与えようと国中に知らせた。多くの学者が集まってきて、さまざまな答えを出した。しかし皇帝はそのどれにも納得できなかった。
 「学者」が即「賢者」とはかぎらない。物語のくわしい内容は略させていただくが、皇帝は、庶民とともに生きる一人の賢者との出会いのなかで、真実の解答を見いだしていく。
 その賢者は示した。
 いちばん大切な時とはいつか。
 それは、「今、この瞬間である」と。
 また、いちばん重要な人とは、だれか。
 それは「今、現在、自分がかかわっているその人である」と。
 そして、いちばん大切な仕事とは何か。
 それは「人に善をなすこと。人のために尽くすことである」と。
 大切なのは、いつかではない。今、この瞬間である。きょう、この一日である。今、この時に、全魂をかたむけていく。その「今」に勝利の未来が含まれている。

 また、どこか遠くに特別な人がいるのではない。権威の人、知識の人、有名の人、富の人が大切なのではない。自分が、今、縁している人、その人を大切にしていく。そばにいる、あの人、この人を、その人の特質を考えながら、全部生かしきっていく。それが賢人である。そこに万人の信頼を勝ち取る道もある。
 私が海外を訪問する場合も、飛行機を降りて、まず最初に会う人、その人に最大の真心で接していく。そこから、私の友好は始まる。
池田大作全集』82巻所収のスピーチより


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