ディズニー 少年の夢は世界を変える

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ディズニーは、皆さんもよく知っているミッキーマウスをはじめ、世界的な人気者を生みだした立派な芸術家です。映画の世界でも、たくさんの賞に輝いております。
 彼は、子どものころから、人を喜ばせるのが大好きでした。どうせ生きるなら、皆が楽しく、愉快に暮らせるようにしてあげたい。そう思っていたのでしょう。彼は絵が得意でした。絵をかいて、皆が喜んでくれるのを見ることが、何より、うれしかったのです。
 けれども彼の家は、決してお金もちではありませんでした。小さいころからアルバイトもしました。その上、八歳の時には、お父さんが病気になってしまい、家はますます貧しくなっていきました。持っていた農場も、とうとう手ばなさねばならない日がきました。
 でもディズニー少年は、へこたれません。お父さんを助けて新聞配達をしながら、学校にかよいました。
 お父さんはいつも、きびしく言いました。「新聞は、毎日の大事なニュースを知らせるものだから、大切に配るんだよ」
 子どもであっても、配達するかぎりは、きちんと責任をもってするように教えたのです。
 ディズニーは、毎朝、眠い目をこすりながら、一生懸命がんばりました。
 私も、小学校六年のころから、新聞配達をしました。寒い朝などのつらさをよく覚えています。だからディズニー少年の気持ちはよくわかります。


”少年の夢は世界を変える”

 ディズニーは、どんな大変な時にも、大好きな絵だけは忘れませんでした。真剣に勉強し、かき続けました。
 そして、いつしか”自分は絵で人々に勇気をあたえていこう。愛と喜びをあたえていこう。それを一生の使命にしたい”と願うようになりました。
 その願いどおり、やがてディズニーの作品は、世界の人々の心を温かい光で包み、希望と優しさを送り続けるようになりました。
 私には、その力の源泉は、彼の少年時代の苦労のなかにあったと思えてなりません。
 えらくなった人は皆、苦労しています。さまざまな苦しいことを体験してこそ、自分も鍛えられ、人の心もわかるようになります。立派な仕事ができるようになるのです。
 いやなこと、つらいことを避けて、わがままになり、自分を甘やかしてしまったら、大人になってから大きな活躍をする土台はできません。


 さて、ディズニーの未来への思いは、皆になかなかわかってもらえませんでした。反対もされました。
 彼は、まず小さな広告代理店で働くことから出発しました。宣伝の絵をかく仕事です。大きな夢にむかって、現実の一歩を踏みだしたのです。たとえ小さな一歩でも、その足どりは生き生きと、はずんでいました。
 そのうちに映画づくりもはじめました。だんだん名前も知られるようになりませいた。そんな時です。ディズニーは、信用していた人に、だまされ、裏切られてしまいます。
 夜もろくろく寝れないでつくった、だいじな映画の権利を奪われてしまったのです。その上、多くの社員たちも去っていきました。ディズニーは、悲しみのどん底につき落とされてしまいました。お金もない。仕事もない。頼れる味方もいない。何もかもなくして、”もうダメだ”と思いかけました。
 しかし、ディズニーには、あの少年時代からの「夢」がありました。絶対に、くじけるわけにはいきません。何とかしなければ――。彼は考えました。
 そして、孤独な彼の心にうかんだのは、ある”友だち”のことでした。友だちとは、以前、ディズニーがひとりぼっちで絵をかいていた時、部屋に現れたネズミのことです。心優しいディズニーは、そのたった一人の友だちに、自分のパンを分けてあげていたのです。
 ”そうだ、彼がいる!”。ディズニーは、その小さな友を新しい主人公に決めました。これが劇的な”ミッキーマウス”の誕生だったのです。

いちばんつらい時こそ、いちばん大切な時


 ミッキーマウスは、たちまちアメリカ中の人気者になりました。陽気で、元気いっぱいに走りまわるミッキーに、大人も子どもも、そして、どこの国でも、人々はひきつけられました。
 じつは、このほがらかなミッキーマウスは、このようなディズニーの苦しい涙の中から生まれたのです。
 いちばんつらい時、その時こそ、いちばん大切な時なのです。新しい道が開ける、いちばんのチャンスの時なのです。このことを皆さんは決して忘れないでください。
 そしてディズニーのように努力するかぎり、負けないかぎり、心の中の夢の木は伸び続けることができます。努力こそ、夢を育てる栄養分なのです。
 続けてディズニーは、ドナルド・ダッグやダンボ、バンビなど、楽しい仲間を世界に送りだしていきます。そして次々と新しい仕事に挑戦し、映画の世界を大きく広げていきました。
 美しい心の彼は、人にだまされることもありました。お母さんの突然の死にもあっています。また戦争になって人々の心はすさみ、彼の映画を見にくる人も少ない。しかし、平和な時代がくれば、かならずや見直されるだろうと、彼は決して苦しみに負けませんでした。
 そして彼の夢は、どんどん大きくなり、世界中のどこにもない「夢の王国」をつくりたいと思うようになりました。たくさんの人を喜ばせてあげたい――その気持ちから、あのディズニーランドが生まれたのです。


 夢というものは、人間だけにしか持てない特権です。夢のない人は寂しい。夢もなく、いつも現実に追われているだけの人は、いつしか苦労や悲しみに負けてしまいます。夢のある人には希望がある。心が強くなる。そして、苦しみを楽しみへと変えていくことができます。

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