協同学習6

学習の輪―アメリカの協同学習入門

学習の輪―アメリカの協同学習入門

  • 作者: デイヴィッド・W.ジョンソン,イデッス・ジョンソン.ホルベック,ロジャー・T.ジョンソン,David W. Johnson,Edythe Johnson Holubec,Roger T. Johnson,杉江修治,伊藤康児,石田裕久,伊藤篤
  • 出版社/メーカー: 二瓶社
  • 発売日: 1998/04
  • メディア: 単行本
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「学習の輪」を再読。協同学習を成功させるコツがたくさん書いてあります。

協同学習の基本的構成要素 23項

1、相互協力関係
グループの仲間がきちんとやらなければ自分も成功できず、課題を完成させるために自分の努力とグループの仲間の努力をうまく調整しなくてはならないという形で、生徒がグループの仲間と互いにつながっていると感じたとき、そこには相互協力関係が存在しているのである。

相互協力関係がはっかり理解される次のような点が明確になる。
①仲間の一人ひとりの努力がグループの成功のために必要かつ不可欠である(つまり、「ただ乗り」はありえない)。
②グループの仲間はそれぞれ、持っている資料や役割、課題についての責任に違いがあり、一緒に努力する過程ではそれぞれが独自の貢献をすることになる。

学習グループ協力関係を組み込む方法(協力を必要とする関係を作る)

①グループ目標・共通目標を明示する
②連帯報酬(グループ全員のテストで9割以上正答すれば、一人5点ずつボーナス点を与える)
③資料の分担(グループのメンバーそれぞれに、課題の完成に必要な情報の一部ずつを与える)
④相補的役割(読み手係、チェック係、激励係、推敲係などを役割を配分する)

2、グループ内の対面的−積極的相互作用

3、個人の責任

次のような手続きを導入する必要がある。

①グループの仕事に各メンバーの努力がどの程度貢献しているかを査定する。
②グループと各個人にその結果をフィードバックする。
③メンバーが不要な努力をしなくてすむように、グループに対して手助けをする。
④すべてのメンバーが最終成果に責任をもつということをはっかりさせておく。

4、スモールグループでの対人的技能

5、グループの改善の手続き

グループの改善の手続きとは、グループによる取り組みを顧みることで、(a)メンバーのどのような行為が有効であり有効でなかったかを明らかにし、(b)どのような行為が引き続きなされるべきで、またどのような行為を直すべきか決めることをいう。







生徒間の積極的関係を促進させたいと望む指導者は、次にあげることを実行するべきである。42項

1、児童や青年が共通の目標を達成すべく、仲間と一緒に取り組める協同的な場面を設定する。

2、可能なかぎりいつでも、個別の成果よりも協同の成果を強調する。

3、仲間との協力的関係を作り上げ維持していくのに必要な対人的技能を直接教える。

4、児童や青年に、仲間の利益や成功に有意義な責任をもたせるようにする。

5、協力的な状況の一部である、支持、受容、関心、関与といった感情を強調する。

6、児童や青年に、仲間に対する義務と責任を果たさなくてはいけないという意識をもたせ、お互いへの権限をもたせるようにする。
7、仲間と協力して取り組んで成功するという経験をさせる。


教師の役割(59項)

1、授業の目標をはっきりと具体化しておく。
2、授業の前に、学習グループの編成についての方針をきちんと決める。
3、生徒に学習課題と目標の構造をしっかり説明する。
4、グループによる協同学習が有効であるかどうかを観察し、課題に対する援助(質問に答えたり、技能を教える)をしたり、生徒の対人技能、グループ技能を活発にするための指導を行う。
5、生徒の達成度を評価し、彼らがいかにうまく協力できたか話しあうよう手助けをする。


協同の場面を構成する19観点(60項)

<ステップ1>指導目標を具体化する
1、学業に関する目標 2、協同技能の目標

<ステップ2>グループの大きさ決める
1、学習グループが大きくなるにつれて、情報の獲得や処理に役立つ能力や専門性、技能、知恵などの幅も広がってくる。
2、グループが大きくなるほど、作業のためのよい人間関係を維持するための、熟練したグループ・メンバーが数多く必要となってくる。
3、グループの大きさは、教材や課題の性質で決まる。
4、学習に使われる時間が短いほど、グループは小さいほうがよい。取り組んで間もない教師たちにとって最もよいと思われるのは、まずペア、もしくは3人組ではじめることである。

<ステップ3>生徒をグループに割り振る
1、グループができるだけ異質な生徒からなるようにすることが望ましい
2、グループがうまく学習するまで変えない。

<ステップ4>教室内の配置を考える

<ステップ5>生徒の相互依存関係を促す教材を工夫する
1、教材を相互依存的に仕組む
(例)グループに対して教材を一組だけ与える。
2、相互依存的な情報交換を仕組む
(例)ジグソー
3、グループ同士を対抗させることによって、相互依存を仕組む
(例)トーナメント方式

<ステップ6>役割を割りあてて相互依存関係を促す

<ステップ7>学習課題を説明する
1、生徒が何をすべきかはっかりと分かるように課題を構成する。
2、学習の転移や保持を最大限に高めるために授業の目的について説明し、学ぼうとしている概念や情報を生徒の既習の知識や経験と関連づける。
3、課題達成のために何を学び、どんな活動をすることになるかを生徒に理解させやすくするために、重要な関連をもつ概念を明確に定義づけ、たどるべき学習手順について説明し、例を提示する。
4、学級のメンバーに対して、生徒各自が課題を理解しているかどうかチェックするよう求める。

<ステップ8>目標面での相互協力関係を作り出す
1、グループとして一つの成果、レポート、論文を出すように求める。
おのおののメンバーには、グループとしてまとめた回答に異議がなく、その答えが適切である理由を述べられる証としてレポートにサインをさせておくとよいだろう。教師は各グループから生徒を一人ランダムに選んで、彼らの解答の根拠を説明させるとよいだろう。
2、グループに賞を与える。

<ステップ9>個人の責任を求める体制を作る
1、教師は個々のグループ・メンバーの達成水準を常に把握する
2、ランダムにメンバーを選んで解答について説明させる
3、互いの成果を見直し合いをさせる
4、自分の分かったことを他の仲間に教える
5、各グループから任意に誰かの解答を選び評価してみる。

<ステップ10>グループ間の協同を促す
1、学級の全員があらかじめ設定された基準を達成した時にボーナス・ポイントを与えるといいかもしれない。
うちの小学校でもやってる人がいます。りんごの木(紙)がどんとクラス掲示物にあって、何を達成するたびに、達成事項を書いたりんごが実っていく。お楽しみ会を開くとか、それに応じたご褒美があったと思います。他にも本で似た事例を見たことがあります。
2、あるグループが課題をやり遂げたら、他のグループの人たちの手助けに回るよう教師を求めるべきである。

<ステップ11>達成基準を説明する
教師は、各グループおよびそのメンバー達成度に絶えず注意を払うだけでなく、学級全体が到達できる基準を設定するなど、協同の水準をもう一つ設けておくとよいだろう。

<ステップ12>望ましい行動を具体的に示す
1、それぞれのメンバーに、どのようにして解答を得たか説明さえる。
2、各メンバーに、今学んでいることと以前学んだことを関連づけさせる。
3、グループの全員が教材について理解し、解答に同意しているかチェックする。
4、全員の参加を促す。
5、他のメンバーが言ったことを正確に聞く。
6、論理的に納得するまでは意見を変えない(多数決の原理が学習を促進することはない。)
7、アイデアを批判しても人も批判しない。

<ステップ13>生徒の行動を観察・点検する
簡単なチェックリスト
1、生徒たちは課題を理解しているか?
2、生徒は相互協力関係を受け入れ、個人の責任を自覚しているか?
3、生徒は達成基準に向けて活動を行なっているか、そしてその基準は彼らがこなせるような適切なものか?
4、生徒たちは具体的に指示した行動を実践しているか?

・教師は、生徒の適切な行動の回数を記録するためのきちんとした観察表をできるかぎり用いるべきである。

行動のリスト
①役に立つアイデア ②質問 ③気もちの表現 ④積極的に聞くこと ⑤アイデアの支持と受け入れ ⑥グループやそのメンバーに対する思いやりや好意の表現 ⑦あらゆるメンバーへの参加促進 ⑧要約 ⑨理解しているかどうか ⑩ジョークによる緊張緩和 ⑪グループの作業の方向づけなど

・生徒を観察者とすることによって、それぞれのグループ機能ぶりに関するさらに幅広いデータを収穫することができる。

<ステップ14>課題に関する援助を与える

<ステップ15>協同のための技能指導を途中に入れる

<ステップ16>授業を終結させる

<ステップ17>生徒の学習を質的・量的に評価する

<ステップ18>グループがどれほどうまく機能したかを査定する
簡単な討議事項
各グループに対してうまくやり遂げたことがらを二つと、なお一層やらなくてはならないことがらか、もっと頑張りたいと思うことがら一つあげさせる(そしてノートに書かせる)というものがある。

<ステップ19>アカデミックな論争を仕組む

1、まず、生徒を4人グループに分け、さらにそれを2組のペアに分割する。これから学ぶことになっている問題に関して、一組のペアを賛成の立場、もう一組を反対の立場に立たせる。それぞれのペアには自分たちの立場について下調べさせる。
2、各ペアは対立するペアに対して自らの立場を表明する。
3、生徒たちは2つの立場がから議論を行なう。
4、今度は両方のペアの役割を逆転させて、それぞれが反対・賛成の立場から議論を行なう。
5、最後に4人のグループは、事実や論理の裏づけをもち、しかもグループ・メンバーすべてに支持される結論に到達し、合意に至る。


相互協力関係の諸類型


相互協力関係と目標1:学習目標への配慮

相互協力を促す目標を設定する方法

1、与えられた課題を所定の習得水準までメンバー全員がきちんとやり遂げることがグループのとしての目標だ、と教師が説明する。習得の基準の設定。(a)一人ひとりの得点基準。(b)進歩得点(今週は先週に比べてメンバー全員がよくできたと確かにいえるようになることがグループの目標という形)

2、次のように「将来得られる可能性の広がり」について解説する。

a.グループの他のメンバーに勝ったり、彼らと協同しないことで得られる目先の喜びより、協同を通して得るものの方が長く役立つことを教える。

b.メンバー同士の相互作用を頻繁に用いるつもりだということ、メンバーの編成もすぐには組み替えないことを強調しておく。

3、グループ全体の評点として、メンバー全員の合計得点を計算する。
・グループの進歩表

4、グループから任意に選びだしたメンバーのテスト用紙やレポート、作文などに基づいてグループ・メンバー全員の評価をする。
生徒たちは教師がグループ評価のために誰かの資料を選び出す前に、100パーセント正しいと確信できるところまでメンバー全員の学習内容に目を通し、訂正しておかなくてはいけない。

5、成果をグループで一つにまとめて提出させるというやり方もある。その際、メンバー全員のサインを入れさせる。これはメンバー全員が説明できることを意味する。他には、メンバー全員が宿題を提出し終えないかぎりは一人ひとりについても提出したとは認めないというルールを設定するものである。


相互協力関係と目標2:競争相手を意識した協力関係
前の週のクラス全体の総合点と競わせる方法がよいと考えている。

相互協力関係と目標3:協力を促す架空場面づくりの工夫


相互協力関係と報酬・賞賛(95項)

1、メンバー全員が基準以上の成績をあげたら、全員の学業得点にそれぞれボーナス点を加算する。

2、メンバー全員が基準以上の成績をあげたら、学業とは関係のない報酬(特別な自由時間、休憩時間の延長、ステッカー、星印、食べ物など)を与える。

3、メンバー全員が基準に達したら、教師がグループを褒める(すなわち社会的報酬を与える)

4、メンバーが力を合わせて努力した場合には、その努力に対してグループに評価点を1点与える。

5、メンバー同士でお互いの学習を促進するための努力が功を奏していると話し合ったりうまくやり遂げたことを喜び合っているときに、メンバーや教師は次のようにすべきである。

a.課題の達成や仲間への援助のためにメンバーがとった有意義な活動を見つけ出す。

b.その活動のよいところをすべて取り上げて褒める。


相互協力関係と学習資料

1、教師はグループに十分な数の用具を与えない。
(例)鉛筆・テキスト・回答用紙・はさみ・辞書・地図・タイプライター・コンピューター・周期表

2、ジクソー(教材を分割して、メンバーに与える)
(例)語彙表・詩の行・単語を構成する文字・段落の中の文・文を構成している単語・図のセット・複数の定義・パズルのピース・複数の問題・指示内容の分担・教材用資料・実験器具・地図・美術用具・料理の材料・報告書の項目

3、文章を書かせるときに教師が分担を決めておくという方式もある。


相互協力関係と工夫
・一定の順序で取り組んでいく形に課題を分ける方式
・循環方式(ビルがある概念を学習する。ビルはをそれをジェーンに教える。ジェーンの成績がビルの成績にもなる)

相互協力関係と役割

①読み手係 ②書き手・記録係 ③激励係 ④チェック係 ⑤称賛係 ⑥精査係(「この問題については、何か他の可能性はないですか」) ⑦おしゃべり監視係 ⑧活性係 ⑨まとめ係 ⑩観察係 ⑪時間係 ⑫言い換え係


相互協力関係と環境


相互協力関係と成績評価(104項)

1、メンバー全員の基準への達成度を基礎に算定したボーナス得点を個人得点に加える

2、メンバーの最低点に基づいて算定した得点を個人得点に加算する

3、進歩量に基づくボーナス個人得点に加算する

4、グループとして結果を一つだけにし、それをグループ得点とする

5、任意に一人のメンバーの結果を選び、それをグループ全員の得点とする

6、学業成績の平均点に協同技能の成績を加算する


協同技能を教えるための4つの前提

1、協同し合う雰囲気の定着

2、協同の技能は直接教えてなければならない

3、技能が習得されて各自に根付くかどうかは、仲間に負うところが大きい

4、協同技能を教えるのは早ければ早いほどいい


どんな技能を教えるべきか?

リーダーシップの技能
1.指示係
2.まとめ係
3.考案係

どのように教えるか
①技能について説明
②手本を示す
③技能を使う時の一連の表現を求めさせる
④ロールプレイ→話し合い
⑤学習課題を与える。技能を使うように求める。メンバーに互いをチェックさせる(個人の責任)


4つの協同技能の水準

①形成 ②機能 ③定着 ④醸成

形成技能:グループを組織化し、適切な行動のための最低限の規範を作り上げるための最初に必要とされるひとまとまりの運営技能

1.すばやくグループにまとまる

2.グループにとどまる

3.静かな声で話す

4.みんなが参加するように促す

5.手足を他人の迷惑にならないように使う

6.課題や教材の用紙をよく見る。

7.名前を呼ぶ。

8.話している人に注目する。

9.仲間をばかにしない。

機能技能:課題をなしとげたり、メンバーが上手に学習し合える関係を保ちながらグループ活動を運営する技能である。

1.グループの学習に方向を与える。
 a.学習のねらいを言葉で述べたり、言い換えたりする。
 b.制限時間を設定し、それに注意を喚起する。
 c.もっとも効率よく学習課題をなしとげる手順を提示する。

2.視線を送ったり、興味を示したり、褒めたり、他の仲間の意見や結論をたずねるなど、ことばとしぐさの両面で相手を支持し受け入れていることを表現する。

3.グループ内での発言やなされたことについて、援助や意味の明確化を求める。

4.説明や明確化を申し出る。

5.他のメンバーの発言を分かりすく言い換え、意味をはっきりさせる。

6.グループの動機づけが低い時に、新しい思いつきを述べたり、ユーモアを発揮したり、大いに熱中してみせたり意欲を喚起する。

7.それがふさわしい時に、自分の気持ちを述べる。

定着技能:学んだ教材の理解をさらに深めたり、いっそう質の高い推理方略を使うように促したり、与えられた教材の習得や保持を最大限にするのに必要とされる知的過程を整えるのに用いる。

1.まとめ係

2.修正係

3.推敲係

4.記憶補助係

5.チェック係

6.説明チェック係

醸成機能:教材の再概念化、生徒相互の理解内容の対立、より多くの情報の探索、結論の奥にある原理についての意見交換、といったことを促すアカデミックな論争に必要な技能

1.人を批判するのではなく意見を批判する
2.学習グループ内で一致しないところをはっかりさせる。
3.多くの別々の意見を一つの意見に統合する
4.あるメンバーの答えが正しいとか妥当だとか判断する根拠を述べるよう求める。
5.他のメンバーの答えや結論にさらに情報や解釈をつけ加えて拡張する。
6.より深い理解や分析に至るような質問をして、厳密に検討する
7.最初の答えや結論をさらに掘り下げ、可能性のあるいくつかの答え考えたりして、より適切な成果を得ようとする
8.グループ学習の成果の現実性を、教師からの指示や使える時間、その他の現実の例と照らし合わせながら確かめる。


協同の技能をどう教えるか?(121項)


協同技能の学習は学習者が次のようにした時に成立する。

1.その技能の中身とそれを使うのにふさわしい時が頭でわかる。
2.頭で理解したことを、やりとりする相手に応じて適切な働きかけ手順(ことばと行動)に具体化する。
3.実際にその技能を使う。
4.その技能を習得する間に間違いを直す。
5.その技能を繰り返して使い、意識せずに使えるレベルまで習得する。

協同技能は次のような過程を経て学習される。

1.その技能を使う
2.フィードバック情報を得る。
3.フィードバックについてじっくり考える。
4.やり方を変えて再びその技能を使う。
5.意識せずにその技能を適切に使えるようになるまで、段階2,3,4を何度も繰り返す。


協同技能を教えるには大きく分けて5つの段階がある。

1.その技能が必要だと納得させる。
2.その技能がどういうものであるか、いつ使われるのか理解させる。
3.練習する場面を設定し、技能の習得を促す。
4.生徒に時間を与え、その技能をどのくらい使いこなせるようになったか点検する(そして、善し悪しをフィードバックする)手順をふませる。
5.技能を自然に使えるようになるまで練習を継続させる。