チームの力: 構造構成主義による”新”組織論 (ちくま新書)
- 作者: 西條剛央
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/05/08
- メディア: 新書
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西條さんの質的研究法の入門書もそうだけど、この本もまた読みたいと思う本。
少しずつ丁寧に振り返ろう。
哲学的な考察から生まれる原理によるチームについての本だから、
いわゆるチームの発達段階のモデルよりも普遍的なこと、本質的なことを述べている本。
チームの発達段階の理論、モデルは、また別の意味で役に立つ。
その理論とは違った考え方から生まれたチーム論。
構造構成主義
それは物事の本質からなる原理を把握する学問であり、価値の原理、方法の原理、人間の原理といった原理群からなる体系である。
(p20)
「体系」というところで、創価教育学大系を思い出した。
創価教育学とは、人生の目的たる価値創造の能力を完備する人材養成法の、知識体系を意味する。
人間に物事を創造する力はない。創造しうるものは、価値のみである。世に価値ある人格とは、この創造力を意味する。
この人格価値を高めるのが教育の目的で、この目的達成の手段を闡明せんとするのが創価教育学の目的である。
『創価教育学大系概論』p10
「物事の本質からなる原理を把握する学問」、これはプラトンやカントが著作で行なっている営みそのもののように思う。そのあとの原理は西條さんが磨き上げたもので、そのことが新しいのだろうか。
”原理”とは、いつでもどこでも論理的に考える限り、例外なく洞察できる普遍洞察性を備えた理路をさす。
(p20)
カントの倫理学はこういったことを目指していたのだと思う、たぶん。教育における原理的な考察、哲学となると、デューイ、カント、牧口常三郎などを思い出す。苫野さんの『教育の力』も原理的考察にチャレンジした本だと思う。これらと違って、『理解をもたらすカリキュラム設計』や『インストラクショナルデザイン』は例えばチームの発達段階理論と同じレベルの話かな。このへんの違いについて、この本でふれられていたと思う。あとで振り返って確認したい。
チームとは何か。
つまり、チームや組織とは目的達成のために作られるものである以上、何をするにも、その目的が決定的に重要になるのだ。したがって、まずリーダーがやるべきことは、チーム作りのすべての判断基準になる「目的」を明確にすることである。どういうチームのメンバーが必要で、どのような戦略が有効で、どういうリーダーシップが求められるのか、すべてのこの「目的」を抜きに考えることはできない。
(p45)
理念とはチームの目的を象徴する”本質”と言える。
(p53)
イエナプランの20の原則、学校目標や教育基本法を思い出す。
思いやりのある、かしこい、たくましいとか、学校目標はお飾りになっていると言われることがあるけれど、お飾りにしているのは教員かもしれない。
理念の本質
「理念」とは、組織が大切にする価値観を表明したものだ。
(p54)
「理念」とは、組織が目指すべき方向性や足並みを揃えるための”組織のコンパス”というべきものである。
(p55)
「理念」とは、それが失われたら存在している意味がない、というほどに堅持すべきものであり、それに照らして意思決定をすべき”組織の憲法”でもある。
(p56)
理念を言語化し、それに沿ってチームを運営することが、いかに本質的に重要か。
ビジョンとは何か?
理念を理解して、それぞれのできることをやる。ゆるく繋がっているのがいいかもしれない。個を犠牲にするとかではないくて。個別化と協同を両立させる。具体的にはじめに出てくるのがイエナプラン教育。イエナプランの20の原則の中で個別化と協同、それに加えてプロジェクト学習を両立させている。
この本は余計な情報が少ないというかほぼない。
『ビジョナリーカンパニー』とかいろいろな先にでた関連本、ビジネス本を読むこともいいけれど、まず西條さんなどの本で、原理的な考察をすると、物事を知る、理解する、洞察するという面で効率がいいかもしれない。目的やそれを表した理念やビジョンを組織運営、組織作りに活かすのかということは、この本だけでもかなりイメージできる。関連した本はこの本で言われていることをさらに裏付けてくれると思う。それは互いにだけど。でもこの本は哲学的な原理的な洞察からということでチーム論、組織論の中では新しいのかもしれない。構造構成主義から考えるチーム論としては確かにはじめてであるということか。