具体的祈りについて

具体的祈りについて
よく昔話したんですが、僕が入信するずっとまえ、子どものころのことです。
うちの近くに、事故で両足を無くした、とても貧乏なおっちゃんが住んでいました。家族三人でした。
そのおっちゃんは、右腕も動かず、左手だけで、ぽんせんを焼いてました。
淡々と、黙々と、ぽんせんを焼く姿は、僕らにとって、一つの人生の模範でした。
多くの子どもたちが、そのおっちゃんが、ぽんせんを焼いている姿を、下校の途中に、見物してました。
そのおっちゃんの家に上がったことがあります。小学校5年生のときでした。そのおっちゃんには、娘さんがあり、僕とその子は同じクラス、五年一組でした。
知りあいの物置に住んでいました。土間を改造して、ぽんせんを焼く仕事場にしてました。
そして、三畳ほどの茶の間。
左が、台所。
ふすまがあって、あるとき、僕は、おっちゃんに上がらせてもらって、そのふすまを開けたんです。
創価学会の人で、なんか紙の箱(ワイシャツの箱か)に白いきれをかけて、仏壇にしてました。
そこの前に、みかんの箱みたいなのに白いきれを引いた、「経机」があり、その上にボール紙が立っていました。
一杯、何か書いてたんです。
「ああ、お願いすることをかいてんねんな」と分かりました。
小さい字だったので、また暗かったので、そして、近眼で、目がねまだかけてなかったので、何が書いてあるのか、分からなかったけど、とても、切ない気持ちがしました。
いろんなことをいのってるんやな、苦しいんやろな。
なんか、プライバシーをのぞき見したような。
でも、半面、がっかりしたんです。
理想の大人やったから。
その人が、こんなに神頼みしてるんや、と思うと、なんかがっかりした部分もありました。
中に入って、近づいて、驚きました。
細かい字で何が書いてあったと思います。
五年一組、49人全員の名前です。
そして、最後に、「けんかしないように びょうきしないように」と書いてました。
それだけでした。
おっちゃんと、30分、(僕にとっては)はじめて、「南無妙法蓮華経」のお題目あげました。
「具体的な祈り」の「模範」を、このときみました。
この「五年一組全員の名前」を越えるものだけを、僕は具体的に祈ろうと思います。

とてもプライベートなお話で、
名前はふせて、でも目が覚めました。祈りもいろいろあります。


もっとよく祈れるし、もっと一人ひとりを大切にできるはず。


自分の酷さを省みる。