嵐の後の花

兄弟のように、みな同じ方向にうなだれ

風に吹かれて滴をしたたらせながら

なお不安におじけづき、雨粒に目はくもり

幾つかの弱いもの折れて倒れ伏している


ゆっくりと、なお麻痺してためらいながら

花たちはなつかしい光の方へと再び頭をもたげ

兄弟のように、ようやく微笑を交わしあう

私たちは無事だ、敵に倒されはしなかったと


その眺めに、私はあの多くの時を思い出す

麻痺し、暗い生の衝動に駆り立てられながら

みじめな夜から再び身を起こして、感謝しつつ

愛するなつかしい光へと向き直ったことを


ヘルマン・ヘッセの一九三三年の夏の詩より
ヘルマン・ヘッセ全集16』日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会編

この詩集凄くいいです。好きな詩人が増えました。
遺稿もふくめて、すべてのヘッセの詩が収めてあるようです。